たっくんの小説

二重螺旋
-1.扉-

 

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「二重螺旋」1.扉

(たっくんのまえがき)
 津鹿沙と隆幸の「ラブ・縄・ストーリー」です。  
 津鹿沙(つかさ)  33歳
 隆幸 (たかゆき) 35歳
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  (1)

 津鹿沙(つかさ)が、その扉の前で躊躇(ちゅうちょ)しています。その扉をノッ
クすれば、ほんの少しでもノックすれば、自分の運命が大きく変わることを知っているからです。
(知っている?……違う。……本当は、何も知らない)

 ようやく、津鹿沙は、決心します。
 トントンとノックします。扉が開きます。
 中から、明るい感じの男性、隆幸が、顔を出します。
「へー……津鹿沙さん?……ですよね」
「はい。……津鹿沙です」
「どうぞ。お入りください」
 津鹿沙は、その隆幸の明るさに、ホッとして、部屋の中に入ります。

 津鹿沙が椅子に座ると、隆幸が話しかけます。
「あのー。いいんですか?」
「えっ?」
「僕なんて、女性を縛れるなら、誰でもいいんですよ」
「……はい」
「もし、……ごめんさい。……自分の趣味じゃない人でも、その人でいいと、決心し
ていたんです」
「……はい。決心ですか」
「そう。決心です。……僕は、今まで『モテた経験』が1度もないんで、……今まで
の人生の中で、1度も『恋人』を持った経験もないんで、……それ以上です。それど
ころか、1度も、『振られた経験』すらないんです。……これは、恋人がいなかった
からで、……『モテた経験』の話ではないんです。
 ……
 ですから、僕には『選ぶ権利はない』と思っています」
「私って、そんなに『みにくい』ですか?」
「まさか!……僕には、もったいなくて!……自分に自信がないのもんで、つい、…
…言い過ぎました」
「あのー。どうしますか?」
「……あなたさえ、よろしければ、縛ってみたいんですが、……ホントに、僕で、い
いのですか?」
「ふーー。……私も、初めてなんですよ」
「えっ?」
「生まれて初めて、男性に縛られるんです。あなたに縛られるんです」
「えっ?……ホント?」
「はい。本当です。……さっきまで、扉の前で、迷っていました。……でも、決心し
たんです。……
 だから、……よろしくお願いします」
「僕の方こそ、よろしく」

 隆幸は、慣れない手つきで、縄を扱っています。
 隆幸は、立っている津鹿沙のうしろに立ち、津鹿沙にお願いします。
「津鹿沙さん。両手をうしろに回してください」

 ようやく、ふたりの扉が、開きます。


  (2)

 隆幸は、慣れない手つきで、津鹿沙を麻縄で縛っていきます。隆幸は、うしろに回
された津鹿沙の両腕に縄を巻き、服の上からですが、津鹿沙の胸の上に4筋、胸の下
に4筋の麻縄を掛けます。何度か間違いをしながらも、なんとか縛りあげます。
 その間(かん)ずーっと、津鹿沙は、恥ずかしそうにうつむいています。
「痛くないですか?」
 津鹿沙は、小さくうなづきます。
「生まれて初めて、縄で縛ったものですから、ほどほどの所が分からなくて」
「私も。……痛いと言えば、痛いのですが。……でも、どこかホッとしていて」
「あのー。辛(つら)かったら、『ヘルプ』と言ってください」
「『ヘルプ』?」
「あっ。はい。……SMクラブの探訪記に、Sの男性が、Mの女性に言っているんで
す。……『ヘルプ』を言えば、責めを止(や)めるからって。……『ヘルプ』を言わ
ないうちは、責め続けるからって」
「……分かりました」
 隆幸は、津鹿沙の前に回ると、うつむいている津鹿沙を見つめます。
(綺麗だなあ)
 津鹿沙は、もじもじしています。
 ……
「あのー、津鹿沙さん。……キスしていいですか?」
 津鹿沙は、また小さくうなづきます。
 隆幸は、津鹿沙のうしろにある腕に自分の手を置き、津鹿沙を抱きしめます。
 津鹿沙は、目を閉じています。
 隆幸は、頭を少し傾け、津鹿沙の唇に自分の唇を重ねます。
 隆幸は、唇を重ねるだけで、満足しています。
 津鹿沙から、離れます。
 隆幸は、津鹿沙に謝ります。
「ごめんね。……初めてなんで、うまくなくて」
「……」
 津鹿沙は、少し不満を感じていますが、隆幸の正直な言葉に、安心もしていきます。
強引に引っ張るような男性に出会いたいと思う一方で、隆幸みたいに、一つ一つ一緒
になって、お互いの気持ちを確かめながら、進んでいくことやり方を、楽しく感じて
います。

 麻縄で縛られている津鹿沙が、隆幸に気持ちをぶつけます。
「隆幸さん。……私、この2時間だけ、『妻』も『母』もお休みして、ここに来てい
ます。……申し訳ありませんが、ここでは、縛られたいんです。……虫がいいことは、
分かっています。……隆幸さんを利用していることを申し訳なく思っています」
「そんなあ。……津鹿沙さん。……僕も同じです。僕も津鹿沙さんを利用しています。
……僕も、女性を縛りたいだけですから、……でも、今は違います」
「えっ?」
「津鹿沙にお会いして、……少し気持ちが変わりました。……一緒に、……本当に、
一緒に、楽しめたらいいなあと思い始めています。……すみません」
「……謝らないでください。……私も、一緒に、楽しめたら、いいなあと思い始めて
いますから……」
 麻縄で縛られている津鹿沙が、微笑(ほほえ)みます。
「津鹿沙さん。よろしくお願いします」
「はい。……隆幸さん。こちらこそ、よろしくお願いします」
 隆幸は、もう一度、津鹿沙を強く抱きしめます。

 隆幸は、津鹿沙のうしろに回り、手のひらを服の上から2つの乳房の上に置きます。
「津鹿沙さん。揉んでいい?」
 津鹿沙がうなづいています。


  (3)

 隆幸は、ゆっくりゆっくり服の上から津鹿沙の乳房を揉(も)んでいきます。
「ぁ……あ……あっ……あん」
 津鹿沙は、少しずつ気持ちよくなっていきます。だんだん悶(もだ)えていきます。
そして、だんだん喘(あえ)いでいきます。
「こんなんで、いいのかなあ」
「……いい……です」
 隆幸は、服の上から津鹿沙の乳房を揉みながら、津鹿沙のうなじにキスをしていき
ます。
「えっ……ああー……あん……ん……あー」
 津鹿沙は、悶え喘いでいます。
 ……
 隆幸は、徐々に手のひらの動きを止めていきます。
 隆幸は、手を止め、手をさげます。
 津鹿沙は、「ふーっ」と息を吐き出します。

「あのー……終わりにして、良かったんですか?」
「ふふ……はい。……気持ちよかったですよ」
「こんなこと、初めてだから、よく分からなくて」
「私だって、初めてだから。……妄想だけは凄いですけど」
「はい。……メールで読みました」
「ありがとうございました」
「いいえ。こちらこそ、ありがとうございました。……津鹿沙さんのおっぱい、気持
ち良かったですよ」
「はい」
 津鹿沙は、顔を赤らめてうつむいています。
 
 隆幸は、津鹿沙を縛っていた縄をほどきます。
「津鹿沙さん。……あのー、……裸になりませんか?」
 津鹿沙は、隆幸に方に振り向くと、「えっ?」という顔をします。
「まだ、早いですか?……津鹿沙さんの裸も見たいし、……縛ってみたいんですが。
……もちろん、セックスはしません。……約束ですから」
「変な約束でごめんなさいね」
「あー、違うんです。……気にしないでください。……津鹿沙さんが、嫌がることは、
しません。……これは、『約束』だからではありません。……本当に、津鹿沙さんが
嫌がることは、したくないんです」
「ふふ……隆幸さんは、『ご主人様』にはなれませんよね」
「『ご主人様』ですか?……はい、なれません。……なりたいと思ったこともありま
せんが。……あのー、僕でいいのですか?」
「はい!」
 津鹿沙は、楽しくなって、気が楽になっていきます。

 津鹿沙は、隆幸が見ている中で、服を丁寧に脱いでいきます。
 そして、全裸になり、恥ずかしそうに立っています。
「綺麗です」
「そんなこと、……子どもを産んでいますから、……」
「いいや。綺麗です!」
「はい」
 ……
 津鹿沙が、隆幸にリクエストします。
「リクエストしていいですか?」
「えー?……あまり難しい『縛り』はできませんよ」
「……『逆海老縛り』なんですけど」 
「『逆海老縛り』って、……確か、……両手、両足を背中で、縛るヤツですか?」
「そんな感じです」
「それなら、できそうです。……じゃあ、ベッドに上がって、うつぶせに寝てくださ
い。……えーと、手順は、これでいいんですよね」
 津鹿沙は、うなづくと、隆幸のベッドの上でうつぶせになります。


  (4)

「津鹿沙さん。両手をうしろに回してください」
 津鹿沙は、両手をうしろに回します。
 隆幸は、津鹿沙の両手首を重ねて、麻縄で4巻きして結びます。
「今度は、足をうしろに折り曲げてください」
 津鹿沙は、両足をうしろに曲げます。
 隆幸は、手を縛った麻縄で、両足首を重ねて、また4巻きして結びます。
「苦しくないですか?」
「大丈夫です」
「そうだ。……このまま、津鹿沙さんを仰向けにしますよ」
「えっ」
 津鹿沙が、強く反対しなったので、隆幸は、津鹿沙の横に毛布を細長く敷きます。
津鹿沙の身体(からだ)の横に転がし、仰向けにします。
 津鹿沙の両手両足は、津鹿沙の身体に隠れ、『両手がない、膝(ひざ)から下の足
がない女性』がそこにいます。津鹿沙の恥部が目立っています。
「僕のイメージ通りです。ホントに、いやらしい。……頭がある『ミロのビーナス』
みたいです」
 津鹿沙は、恥ずかしそうに、横を向いて目をつぶっています。
「津鹿沙さん。しばらく、このままでいいですか?……あ、それから、……できたら
でいいのですが、……もがいてくれませんか?」
「えっ?」
「芋虫(いもむし)みたいに、蠢(うごめ)く姿を見たいんですが」
 津鹿沙は、もがき始めます。
「ホントに、いやらしい!……卑猥(ひわい)です。……津鹿沙さんの恥部が、淫靡
(いんび)です。……そうだ。今、鏡を持ってきますね」
「えっ?……やめて。……持ってこないで」
 隆幸は、『ヘルプ』がないので、バスルームから、鏡を持ってきます。
「津鹿沙さん。……目を開けてください」
 津鹿沙は、目を開けられません。
「目を開けないと、……いつまでも、このままですよ」
 津鹿沙は、目をゆっくり開けます。鏡に自分の姿が写っています。
「ほら、いやらしいでしょ。……もがいてみて」
 津鹿沙は、少しだけもがいてみます。
(本当。……いやらしい!)
 津鹿沙は、あまりにいやらしい自分の姿に、思わず目をつぶります。
 ……
 しばらく見つめていた隆幸は、ベッドに上がり、『逆海老縛り』された裸の津鹿沙
を横にすると強く抱きしめます。津鹿沙の2つの乳房が、隆幸の胸に押さえつけられ、
その圧力を隆幸は気持ちよく感じています。
 隆幸は、もう1度、津鹿沙にキスします。今度は、舌を津鹿沙の口の中に入れ、津
鹿沙の舌を探します。津鹿沙の舌が隆幸の舌にからめてきます。
 隆幸には、生まれて初めてのディープキスです。
 津鹿沙が目を開けると、隆幸が涙を浮かべています。
(えっ)

 隆幸は、津鹿沙の縄をほどきます。
 津鹿沙は、横たわったままです。
「あのー。津鹿沙さん、大丈夫ですか?」
「えー。大丈夫です。……ふふ。……余韻(よいん)を楽しんでいるだけですから」
「余韻?……ああ、分かりました」
 隆幸は、バスルームに行き、シャワーの準備をします。

 津鹿沙は、シャワーを浴びながら、「二重螺旋」を一緒に登って行く相手に巡り会
えた喜びを感じています。
                (おわり)

(このお話は、すべてフィクションです)
束沙さんへ・2002/8/5〜・たっくんより
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* s-takkun@dream.big.or.jp
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