男爵ひろし様の作品

宇宙螺旋戦争
-3nd・エピソード-

アイゼンヘルツ帝国の首都星ゲーリングに帰還した、帝国三大将軍は元帥府を訪れバクロード元帥に戦果を報告する。上結果に対して帝国三大将軍を労う元帥。
「艦隊戦に於ける諸君らの活躍にはバロン皇帝陛下も大いに満足して居られる。もはや螺旋連邦には我がアイゼンヘルツ帝国との艦隊戦力は皆無に等しい。ご苦労であった」
「はっ!(帝国三大将軍)」
「だが、諸君らも知っての通りまだガルマン回廊には、螺旋連邦の大型人工要塞がある。その要塞を破壊せん限り、螺旋連邦首都星地球を陥落させる事は出来ん」
ブラードル大将が発言した。
「では、元帥閣下。いよいよ要塞攻略作戦が始まると言う事ですな」
ユユーゼ大将が発言した。
「新造大型要塞と中型、小型要塞を持ってすれば容易い事でしょう」
ビトー大将が発言した。
「もやは敵の艦隊戦力も皆無に等しい訳ですからな」
「そう言う事だ。この程大型要塞も完成し中型、小型要塞の整備も万全である。よってこれより作戦内容を話す。ランドルフ軍務幕僚、説明を」
「はっ!では、作戦内容をご説明致します。先ず、帝国三大将軍の方々には各要塞司令官として任務に 付いて頂きます。大型要塞の司令官にはブラードル大将、中型要塞司令官にはユユーゼ大将、小型要塞 司令官にはビトー大将。また、要塞支援艦隊20万隻の司令官にはバクロード元帥閣下に着任して頂き 、同時に要塞攻略作戦総司令官になって頂きます。各要塞及び支援艦隊は本日より5日後、ガルマン回 廊までハイパー・デス・ドライブを行い、敵要塞の守備砲塔の有効射程距離50Kmより、10Km手 前でドライブ・アウト致します。そして敵要塞の正面に大型要塞、右側面45度に中型要塞、左側面4 5度に小型要塞と言う陣形を布陣。敵要塞の有効射程距離50Kmまで接近して、各要塞からの一斉攻撃を開始致します。尚、大型要塞の主砲は1回発射する事に再び最大エネルギー出力充填時間が10分 程度必要な為、その間は中型要塞と小型要塞の守備砲塔からの援護砲撃が必要となります。更に、我が帝国艦隊と比べ皆無に等しいとは言え、まだ、螺旋連邦には5万隻の艦隊が健在です。要塞支援艦隊は 敵要塞の後方50Kmに移動待機して、要塞防衛を目的として出撃して来るであろう敵艦隊5万隻を迎 撃致します。これにより敵要塞はほぼ四方から包囲される事となり、我が帝国軍の猛攻によって必ずや 敵要塞は破壊される事でしょう。また、本作戦を更に有利に運ぶ為に敵要塞内部に潜入させている諜報将校による、敵要塞システムの破壊工作活動が現在進行中であります」
ランドルフ軍務幕僚の説明が終わり、バクロード元帥が発言する。
「帝国三大将軍を含め各艦隊の将兵には、作戦決行日まで首都星内自由行動とする。各員充分英気を養う様に。以上だ!」
「はっ!(帝国三大将軍)」

ここはガルマン回廊にある螺旋連邦の要塞ドック。第2第5艦隊旗艦から要塞内に向かうサダール大将とツカサ中将を一人の男が出迎えた。
「両閣下、ご無事で何よりです」
「うん?デルビー作戦参謀。貴官はジャルバス元帥閣下と共に第1艦隊に居たのではないか?」
「はい、サダール大将閣下。戦闘中敵の通信妨害の為に第3艦隊のダーイ大将閣下の下へ、元帥閣下のご命令を伝える為に小型艇に乗り途中まで向かったのですが、時既に遅し。第3艦隊旗艦が撃破されて居り、第1艦隊旗艦に帰艦し様と致しましたが、その旗艦も撃破されてしまい致し方なくそのまま要塞へと帰還した次第であります」
「なるほど。小型艇であってもあの宙域からなら充分帰還出来るな」
「はい。それから事の次第を螺旋連邦大統領閣下に私から連絡して置きました」
「そうか。それで大統領閣下に於いては何と仰せだ?」
「はい。大統領閣下からは敵艦隊来襲に備え、要塞司令官をサダール大将に。また、副司令官をツカサ中将とし、螺旋連邦領域内への帝国艦隊の侵入を阻止せよとのご命令です」
「うむ、分かった。デルビー作戦参謀、艦隊の修復整備を可能な限り急がせろ」
「はっ!」
そしてツカサ中将がデルビー作戦参謀に尋ねる。
「デルビー作戦参謀、元帥閣下はどの様なご命令を伝え様としたのか?」
「ツカサ中将閣下、それは今となってはご説明する意義が御座いません」
「なるほど。だが、一応聞いて置こう。今後の作戦立案の参考の為に」
「艦隊戦に関するご命令だったとだけ申し上げて置きましょう。もっとも連邦と帝国の艦隊戦力の格差がこれだけ開いてしまっている今では無意味でしょう」
「分かった。もういい・・・・・・・・・・・・・・」
サダール大将とツカサ中将はデルビー作戦参謀と別れて作戦室に向かう。
「サダール司令官、ちょっとデルビー作戦参謀についてお話しが・・・・・・」
「ツカサ副司令官、貴官にも引っ掛かる様だな」
「はい、彼の話した内容が聊か出来過ぎている様に思えるのですが・・・・・」
「私もそう思う。あの激しい状況下で元帥閣下が態々参謀を使い、小型艇で伝令を行うとは思えん」
「そうですね。その場合、下士官クラスを使えば済む事ですから。また、私の質問に対し故意にはぐら かそうとしている様な気がしますので・・・・・・・」
「ツカサ副司令官、要塞のメインコンピュータにアクセスしてデルビー作戦参謀の経歴と、過去の帝国との戦闘で捕虜とした帝国諜報将校の情報ファイルを調べてくれ」
「はっ!では、早速」
サダール司令官の依頼で要塞のメインコンピュータ室に赴くツカサ副司令官。
「コンピュータ、認識番号19620122。螺旋連邦軍ツカサ中将だ」
「認識番号確認イタシマシタ。ツカサ中将閣下」
「コンピュータ、デルビー作戦参謀の経歴と帝国諜報将校の情報ファイルを開け」
「了解イタシマシタ、ツカサ中将閣下。デルビー作戦参謀ノ軍務経歴ト帝国諜報将校ノ情報ファイルヲ開キマシタ」
「う〜む、なるほど。彼は螺旋連邦士官学校を主席で卒業したエリートか。では、帝国諜報将校の情報ファイルの方はどうかな?」
ツカサ副司令官が帝国諜報将校のファイルに目を通した。するとある人物の情報に至った。
「うん!?こ、これは!・・・・コンピュータ、彼の軍務経歴の最終更新日は何時だ」
「ハイ、地球時間デ西暦2498年1月22日デス」
「コンピュータ、彼が士官学校を卒業した日の全卒業生のファイルと照会して、現在のデルビー作戦参 謀と同一人物かどうか調べろ」
暫くプログラムファイルにアクセスしていたコンピュータが答える。
「ツカサ中将閣下、現在ノデルビー作戦参謀ト卒業生ファイル二アル人物ハ一致イタシマセン。卒業生ファイル二登録サレテオリマス人物ハ、地球時間デ西暦2489年4月3日二帝国艦隊トノ戦闘デ戦死シテオリマス」
「やはりそうかぁ。コンピュータ、このデータを要塞副司令官の私の部屋にあるコンピュータに転送し て置け」
「ハイ、ワカリマシタ。ツカサ中将閣下」
デルビー作戦参謀の正体に気付いたツカサ副司令官は、副司令官室のコンピュータに転送したデータをCD−ROMに移して、サダール司令官の下へ赴いた。

「サダール司令官、デルビー作戦参謀に付いての事が判明致しました。詳細はこれに」
ツカサ副司令官から手渡されたCD−ROMをデスクコンピュータで見たサダール司令官は。
「なるほど、やはりそうだったかぁ」
「彼を緊急逮捕致しますか?サダール司令官」
「いや、1〜2日様子を見よう。彼が何かの行動を起こすのを確認した上で逮捕する事にする」
「はい、分かりました。それでは私の方で彼の行動を監視致しましょう」
「うむ、そうしてくれ」
こうしてツカサ副司令官のデルビー作戦参謀への監視の目が光る事となった。そして2日後の深夜に何者かが要塞管制室の制御板の傍で、何かをしているのをツカサ副司令官が目撃した。
「そこに居るには誰だ!」
その声に驚きツカサ副司令官の方を振り向く謎の人物。
「おや?何方かと思えばツカサ副司令官ではありませんか。こんな時間にどうしたんですか?」
「デルビー作戦参謀、貴官だったのか。貴官の方こそ深夜にここで何をしている?」
「えぇ、要塞管制システムに異常が無いかを確認していました。敵の攻撃に備えて・・・・・」
「ほう、それは感心な事だ。だが、敵の攻撃に備えてとはどちらの敵の事かな?デルビー作戦参謀」
「何、何をおっしゃっているのですか?帝国軍に決まっているではありませんか・・・・・」
「帝国軍の支援の為か?デルビー作戦参謀。いや、帝国諜報将校デルビー大佐・・・・・」
己の正体が見破られたと判断したデルビー大佐は、ハンドビーム・ガンを取り出してツカサ副司令官の方に銃口を向けた。
「ビイィィィィィィィィィィィ!うわぁああああ!!」
一瞬早く、ツカサ副司令官の放ったハンドビーム・ガンがデルビー大佐のハンドビーム・ガンを落とす。
「警備兵!デルビー大佐をスパイ容疑と破壊工作の現行犯で逮捕しろ!!」
「はっ!」
ツカサ副司令官が密かに待機させていた警備兵によりデルビー大佐は逮捕された。その後、デルビー大佐を尋問して得られた情報を元に対応策が練られた。
「ツカサ副司令官、あと3日後に帝国軍の要塞攻撃作戦が行われる。敵の戦力は強大だ・・・・・・」
「はい、ですが3日後に首都星ゲーリングを出発してからガルマン回廊まで、更に7日は掛かるでしょう。 その10日の間に防衛手段を講じなければなりません。サダール司令官」
「う〜む。何か良い手段は無いものか・・・・・・」
「司令官、先ずは帝国軍にデルビー大佐から入手した暗号を利用して、敵にこちらの要塞システムの破壊工作が成功したと偽情報を送ります。次にこの要塞にも配備してある全ての空間探知機雷にステルス遮蔽装置を取り付けて、敵の中型要塞と小型要塞の予定宙域に散布します。また、我が要塞の後方に移動待機して来る敵艦隊20万隻の予定宙域にも、同様に空間探知機雷を散布します。我が軍の艦隊5万隻を敵の陽動作戦に乗ったと見せ掛けて出撃する事で、敵艦隊は我が艦隊に向けて一斉砲撃を開始するでしょう。敵の中型、小型要塞と艦隊砲撃が開始されると宙域に散布した空間探知機雷に反応して、両要塞は破壊され敵艦隊に於いても半数以上を撃破可能でしょう」
「なるほど。だが、敵大型要塞の主砲攻撃にはどう対処する?」
「敵大型要塞主砲は再充填に10分程度必要ですが我が要塞の守備砲塔を3段階詰り、10万基の砲塔を3万基単位で順次交代で敵大型要塞に集中砲撃を仕掛けます。これにより我が要塞守備砲塔のエネルギー充填時間を気にせずに連続砲撃が可能ですし、敵大型要塞を中心に45度の角度で扇状に位置している中型、小型要塞からの衝撃波が、大型要塞に向け少なからず影響を与えるでしょう」
「うむ。我が要塞の外壁は流体多結晶合金に覆われているから、敵大型要塞の主砲砲撃の直撃を受けても暫くは持つだろう。敵大型要塞の外壁は固体結晶体で覆われているし、1度主砲を撃つと10分間は砲撃が不能になる。更に左右からの衝撃波で損傷を負う事になり、我が要塞からの連続砲撃によって敵大型要塞は破壊すると言う訳だな。ツカサ副司令官」
「はい!そうです。サダール司令官」
「分かった!直ちにその作戦を決行する事にしよう!」
「はっ!」
こうして螺旋連邦軍の対帝国軍防衛迎撃作戦が開始された。

そして3日後、アイゼンヘルツ帝国首都星ゲーリングを出発したバクロード元帥指揮下の帝国軍は、第8惑星宙域で最初のハイパー・デス・ドライブを開始した。ドライブ中の中型要塞内では。
「イブレッド少将、確か貴官の弟が帝国諜報将校だったな」
「はっ!そうであります。ユユーゼ司令閣下」
「名は確かデルビー大佐だったな。貴官の弟が破壊工作を行っているのなら間違いあるまい。先刻の艦隊戦に於いてもデルビー大佐からの情報によって、我が帝国艦隊は大勝利を治めたのだからな」
「はっ!有難う御座います。今回も破壊工作が成功したとの連絡があり、今頃は螺旋連邦軍は要塞システ ムの修復に翻弄されている事でしょう」
「うむ。今回も我が帝国の圧倒的勝利は間違いないな。あはははははは」
既に帝国軍の作戦が螺旋連邦軍に漏洩しているとも知らずに、帝国軍は予定の航路を進攻していた。第5惑星、第3惑星と順次ハイパー・デス・ドライブを繰り返していた帝国軍は、第2惑星と第1惑星との中間宙域で最後のハイパー・デス・ドライブを行った。首都星ゲーリングを出発して10日の航程が過ぎていよいよ螺旋連邦軍の要塞と帝国軍の要塞との決戦の火蓋は切って落とされたのである。
「バクロード総司令閣下、各要塞、敵要塞の有効射程距離の手前10Kmの宙域にドライブ・アウト致し ました。次のご命令を・・・・・」
「うむ。ランドルフ軍務幕僚、大型要塞、中型要塞、小型要塞の司令官に伝達。作戦陣形を布陣して敵要塞有効射程距離まで前進せよ!」
「はっ!各要塞、作戦陣形を布陣。敵要塞有効射程距離まで前進致します!!」
「続いて我が要塞支援艦隊も敵要塞後方50Km宙域まで移動開始せよ!!!」
「はっ!要塞支援艦隊、敵要塞後方50Km宙域まで移動開始致します!!!」
帝国軍の各要塞と要塞支援艦隊は予定の作戦行動を開始した。

一方、帝国軍の来襲を確認した螺旋連邦軍の要塞内では管制官の報告が続く。
「サダール司令官!帝国軍の要塞包囲網が完成しつつあります!!!」
「よし!空間探知機雷の散布は終了しているな!!」
「はっ!全て予定の宙域に散布完了して居ります!!」
「ツカサ副司令官!要塞後方より全艦隊出撃!!敵艦隊への陽動作戦開始せよ!!!」
「はっ!直ちに全艦隊出撃し敵艦隊への陽動作戦を開始致します!!!」
十数分後、予定の作戦宙域に達した帝国軍の各要塞と要塞支援艦隊に於いては。「バクロード総司令閣下、各要塞及び要塞支援艦隊は予定の作戦宙域に到達致しました」
「うむ。ランドルフ軍務幕僚、敵要塞からの艦隊の動きはどうだ?」
「はっ!敵艦隊5万隻が要塞後方より出撃して来た模様であります!!」
「よし!各要塞、及び要塞支援艦隊は直ちに一斉砲撃を開始せよ!!!」
「はっ!各要塞、及び要塞支援艦隊は直ちに敵要塞及び敵艦隊に向け、一斉砲撃を開始致します!!!」
大型要塞司令室では。
「ブラードル司令閣下!バクロード総司令閣下より敵要塞砲撃命令が入りました!!」
「ヒーロック准将!直ちに主砲最大出力で砲撃開始せよ!!」
「はっ!直ちに主砲最大出力で砲撃開始致します!!」
中型要塞司令室では。
「ユユーゼ司令閣下!大型要塞主砲、砲撃体制に入って居ります!!」
「イブレッド少将!中型要塞主砲最大出力で砲撃開始せよ!!」
「はっ!直ちに主砲最大出力で砲撃開始致します!!」
小型要塞司令室では。 「ビトー司令閣下!大型、中型要塞の砲撃が開始されます!!」
「タークト准将!小型要塞主砲最大出力で砲撃開始しろ!!」
「はっ!直ちに主砲最大出力で砲撃開始致します!!」

螺旋連邦軍の要塞管制室では。
「サダール司令官!各要塞からの一斉砲撃が開始されました!!30秒で大型要塞主砲の直撃が来ます!」
「よし!直ちにこちらも応戦しろ!!」
「はっ!直ちに応戦致します!!!」
同じ頃、要塞後方から出撃したツカサ副司令官指揮下の艦隊5万隻の方では。
「ツカサ副司令官!敵艦隊の一斉砲撃が開始されました!!」
「よし!こちらの思惑通りだな。全艦隊!現宙域で待機せよ!!」
「はっ!全艦隊!現宙域で待機致します!!」
場面は再び帝国軍側に変わり中型要塞と小型要塞の司令室では。
「ガァアアアアアアアアアアアアン!!ユユーゼ司令閣下!主、主砲の砲撃が跳ね返されましたぁ!!」
「イ、イブレッド少将!・・・いったい何事だぁ!!!」
「分、分かりません!!・・・・・・・・」
「大、大至急!原因を調べろ!それと主砲第2砲撃の準備を急げ!!」
「司、司令閣下!要塞動力炉が臨界点を超えています!!こ、このままでは爆発致します!!!」
「何、何だとう!止むを得ん!総員緊急退避をしろ!!!」
「要塞動力炉が爆発!ま、間に合いません!!う!うぁわああああああああああああああああああ!!」
「グァアガァガガガガガーン!」
激しい轟音と共に中型要塞は大爆発をして粉々になった。
「グガァアアアアアアアアアアアン!!ビトー司令閣下!砲、砲撃が跳ね返されましたぁ!!」
「タ、タークト准将!・・・何、何故?砲撃が跳ね返されたんだ!!」
「原、原因不明!あっ!中型要塞が爆発した模様です!!!」
「何!・・・第、第2砲撃の準備はまだかぁ!!」
「だ、駄目です!要塞動力炉が臨界点突破!!間も無く爆発致します!!!」
「くそぅ!・・・・うわぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「ガダァアアアアアアアアアアアン!!」
中型要塞の後を追う様に小型要塞もまた激しい轟音と共に大爆発をして消滅してしまった。
「ガァガガガーン!ブ、ブラードル司令閣下!中型、小型要塞が爆発!左右から衝撃波が来ます!!」
「ヒ、ヒーロック准将!主、主砲の再充填作業を急げ!総員!衝撃に備えろ!!」
「はっ!主、主砲再充填完了まであと7分!!あっ!衝撃波が来ます!!!」
「ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!」
「司、司令閣下!今の衝撃波と敵要塞からの砲撃により、要塞損傷率が70%を越えましたぁ!!」
「主、主砲はまだ発射出来ないのかぁ!」
「は、はい!・・・・・・あと4分で再充填完了致します!!」
一方、螺旋連邦軍の要塞管制室では。
「よし!敵大型要塞に可也の損傷を負わせたぞ!全砲門最大出力!・・・撃て!!!」
「はっ!全砲門最大出力で砲撃を開始致します!!!」
再び大型要塞の司令室では。
「ブ、ブラードル司令閣下!主砲、発射準備完了致しました!!」
「よし!直ちに発射せよ!!」
「司、司令閣下!敵要塞からの直撃が来ます!!ドガァアアアアン!うわぁあああああ!!!」
「直ちに応戦しろ!」
「は、はっ!直ちに応戦致します!!」
「グガァガアガガガガガー!司、司令閣下!主砲のエネルギーが逆流して動力炉を損傷!!!」
「何、何だとう!総員!緊急退避しろ!」
「も、もう!間に合いません!!・・・・・・・・う、うぁわああああああああああああああああ!!」
「ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!」
大爆発を起こし遂に大型要塞も宇宙の藻屑と成り果てたである。

螺旋連邦軍の要塞管制室に於いては歓喜の声が響き渡っていた。
「やったぞ!敵要塞を全て破壊したぁ!!」
「よし!これより後方敵艦隊に向け砲撃を行い我が艦隊の援護を行う。全砲塔180度転回!!」
「はっ!敵艦隊への砲撃の為、全砲塔を180度転回致します!」
同じ頃、螺旋連邦艦隊5万隻に向け一斉砲撃をしていた帝国艦隊では。
「バ、バクロード総司令閣下!原因は不明ですが我が艦隊の砲撃が跳ね返されてしまい、前衛艦隊10万隻が撃破されました!!」
「ランドルフ軍務幕僚!各要塞の状況はどうなっている?」
「はっ!・・・・・各要塞・・・・・全滅!・・・・・信、信じらません!!」
「何!?・・・・・要塞システムは破壊されていたのではないのか?」
「総司令閣下!只今、宙域の残存エネルギーを解析した所、指向性熱核粒子が検知されました!」
「馬鹿な!空間探知機雷などはこの宙域には存在していない筈?」
「ど、どうやら敵は機雷に何かの遮蔽装置を取り付けたものと推測致します!!」
「螺旋連邦軍めぇ!小賢しい真似を・・・・・・・・・・」
「総、総司令閣下!我が艦隊の右翼から敵艦隊の砲撃と前方から敵要塞からの砲撃が来ます!!!」
「何!大至急!回避行動へ移行しろ!!」
「直撃来ます!!!グゥワワワワギガガガガガガガー!」
「うっうう・・・・・ランドルフ・・・・ランドルフ軍務幕僚!・・・・」
「総、総司令閣下!ランドルフ軍務幕僚は只今の直撃で戦死されましたぁ!!!」
「何、何だとう!・・・我が帝国三大将軍とその副臣と軍務幕僚まで戦死したと言うのかぁ!!」
「総、総司令閣下!只今、首都星ゲーリングから長距離亜空間通信が届きましたぁ!!!」
「何だ!読め!」
「はっ!・・・・・・・・・こ、これは!・・・・・・・・・ま、まさか・・・・・・・・・」
「どうした?早く読め!」
「は、はい!・・・帝国標準時25839。心筋梗塞の為、バロン皇帝陛下がご崩御されましたぁ!!」
「何!皇、皇帝陛下が・・・・ご崩御!・・・・そ、それで皇位継承者は誰だ?」
「は、はい!・・・一人娘のユーヤ皇女妃殿下が新皇帝の玉座に・・・・・・・」
「で、他には?」
「はっ!・・・全軍直ちに戦闘中止し首都星ゲーリングに帰還せよとの勅命です!」
「勅命では致し方ない。全艦隊!現宙域から急速離脱!回廊の出口まで行きハイパー・デス・ドライブ で帰還する!!」
「はっ!」
ユーヤ新皇帝の勅命を受けて急遽撤退を始める帝国艦隊。螺旋連邦軍の予期せぬ反撃に遭いバクロード元帥の常勝記録はここに潰えたのである。

ツカサ副司令官指揮下の艦隊旗艦の艦橋では。
「ツカサ副司令官、帝国艦隊が撤退いて行きます。追撃致しますか?」
「いや、まだ、敵の艦隊は8万隻以上は健在だ。深追いはよそう」
「では、要塞に帰還致しますか?」
「うむ。全艦隊、要塞へと帰還する!」
「はっ!」
要塞に帰還したツカサ副司令官はサダール司令官の下に赴く。
「サダール司令官、敵は急いで撤退致しましたが何か?」
「うん、こちらで傍受した長距離亜空間通信によると、バロン皇帝が死んだ様だ」
「バロン皇帝が死んだ!・・・・・それで皇位継承者は誰に?」
「一人娘のユーヤ皇女が女帝として新皇帝の玉座に座るらしい」
「そうですか。女帝が誕生するのか・・・・・・」
「そう言う事になるな。だが、今回の戦闘で帝国軍も大打撃を受けた形となった。この要塞が健在な内は敵もおいそれとは出撃して来れまい」
「そうですね。その間に艦隊の再編制も致しませんと・・・・・・・・・」
「そうだな。だが、先ずは勝利の祝杯を全員で上げ様ではないか。ツカサ副司令官」
「あはは、そうですね。私が司令官の杯にお酒を入れて差し上げますよ」
「お!それは有り難い。螺旋連邦で1、2を争う美人将官に酒を注いで貰えるとは」
「司令官、お口がお上手ですわね。・・・・・・うふふ」
1度は艦隊戦に敗れた螺旋連邦ではあるが要塞決戦に於いて大逆転をした事により、その後、三ヶ月間は特に螺旋連邦とアイゼンヘルツ帝国との間での戦闘は行われなかった。双方とも多くの尊い人命を代償として得られる物は何か。もはや更なる流血を繰り返す事でしか術は存在し得ないのか・・・・・・・・・

宇宙螺旋戦争(スペース・スパイラル・ウォーズ)ファイナル・エピソードに続く


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