男爵ひろし様の作品

宇宙螺旋戦争
-2nd・エピソード-

螺旋連邦の補給艦隊を撃破殲滅したビトー大将指揮下の帝国艦隊は、第1惑星宙域に到達して設置してある空間探知機雷の切除を行っている。
「工作班、諜報将校により入手したプログラムファイルを中間子パルスに掛け解析せよ」
「はっ!直ちに解析作業に入ります。タークト准将」
螺旋連邦艦隊が設置した空間探知機雷にはある特徴が装備されていた。通常、機雷は接触した物体を破壊する仕組みになっている。だが、この機雷はそれとは逆に1000mまでに物体が近付くと、内部から指向性熱核粒子を放出する。これは物体特に艦隊の放つヘビーパルサー動力機関に反応して、接近する艦隊を破壊する能力が備わっている。また、艦砲砲撃で機雷を破壊した場合、圧縮されている指向性熱核粒子が一気に空間に拡大してしまい、宙域にいる艦隊全てを壊滅していまう威力がある。そこで唯一その危険を回避する方法は、機雷に対して友軍である事を認識させる為、各艦隊には各々決められた同調周波数がある。各艦隊は機雷群に周波数を送信し友軍である事を認識させると同時に、機雷群が各艦隊の為にリング状に広がり進路を開放する仕組みである。
「タークト准将、同調周波数の解析が完了致しました」
「よし!空間探知機雷群に同調周波数を送信!」
「はっ!同調周波数送信開始!」
帝国艦隊から同調周波数を受信した空間探知機雷群は、それを友軍と認識してリング状に広がり艦隊進路を開放したのであった。それを確認したビトー大将は全艦隊に命令する。
「全艦隊、開放宙域を抜け第1惑星へと前進せよ!」
難なく機雷群を突破した帝国艦隊はブラードル艦隊とユユーゼ艦隊に向け、補給殲滅艦隊第2次作戦完了と打電した。それを入電した両艦隊は直ちに作戦行動を遂行するのである。
「ブラードル大将閣下、ビトー大将閣下より螺旋連邦補給艦隊殲滅及び、空間探知機雷群を無事突破したとの連絡が入りました」
「ヒーロック准将、直ちに首都星防衛艦隊を第10惑星に向け発進させよ!」
「はっ!全艦隊、第10惑星に向け発進致します!」
「ユユーゼ大将閣下、ブラードル艦隊とビトー艦隊が作戦行動を開始致しました」
「イブレッド少将、我が側面遊撃艦隊はこれより第5第6惑星の中間宙域に向かう」
「はっ!全艦隊!紡錘陣形にて第5第6惑星の中間宙域に移動致します!」
帝国三大将軍の率いる艦隊による螺旋連邦艦隊殲滅作戦の火蓋は遂に切られたのであった。

第5惑星と第6惑星の中間宙域で合流した第4艦隊、第5艦隊、第6艦隊では司令官同士での通信回線が開いていた。ヨシー中将がエムイ大将と交信している。
「エムイ大将閣下、先程ツカサ中将とも討議致したのですが・・・・・ツカサ中将。貴官から」
「分かった。ヨシー中将、私から閣下に話そう。エムイ大将閣下、ここは作戦を変更すべきかと」
「ツカサ中将、それはどう言う事だ?」
「10個の惑星から帝国駐留艦隊が全て撤退したとなれば、敵は所有する艦隊を一箇所に集結していると判断するのではなく。我が螺旋連邦艦隊の前後から攻撃して来るものと推測出来るでしょう」
「ほう、では、その根拠は何か?」
「はい、各惑星に於いて庶民達に艦隊物資を提供した事で、当初の作戦日程が大幅に遅れた結果。敵の外周宙域駐留艦隊が我が、螺旋連邦艦隊の後方へ迂回する時間を稼いだのではないかと推測します」
「うむ、だが、貴官の推測通りだとしても敵は空間探知機雷に阻まれて、後方から我が艦隊を追尾するのは不可能ではないか?」
「確かにそうでしょうが、兵員物資の不足により総艦隊数で敵に上回る我が艦隊でも、もし敵艦隊との戦闘が長引けば補給の出来ない分、戦況は一気に逆転する恐れが生じるでしょう。ましてや要塞と空間探知機雷との間に敵の外周駐留艦隊が集結していたら、撤退している我が艦隊は前後から挟まれ完全に退路を絶たれる結果となります」
「ツカサ中将、貴官は1度も敵艦隊と砲火を交えずに全艦隊を要塞に撤退すべきだと言う訳か?」
「はい、特に食料が大幅に不足している以上、将兵達の士気の低下に繋がります」
「うむ。・・・・・貴官の言が正しかろう。私からジャルバス元帥に意見具申して置こう」
「はっ!宜しくお願い致します!」
「では、通信を終わる・・・・・」
ツカサ中将の意見忠告を聞き入れたエムイ大将は、この後ジャルバス元帥に連絡をする事となる。
「間に合えば良いのだが・・・・・・・・・・・」
この時のツカサ中将危惧はその後、的中する結果となった。

第10惑星宙域に到達したブラードル大将指揮下の首都星防衛艦隊は、第10惑星に合流している螺旋連邦第9艦隊と第10艦隊との交戦を開始する。
「ヒーロック准将、我が艦隊の左翼艦隊を敵第9艦隊の右翼。右翼艦隊を敵第10艦隊の左翼に移動させる。両翼艦隊の移動が完了次第、中央艦隊を前進させよ!」
「はっ!両翼艦隊を直ちに移動開始致します!」
帝国艦隊の左翼10万隻、右翼10万隻が螺旋連邦艦隊の両翼に移動した。第10艦隊旗艦の艦橋ではリュウ少将が第9艦隊のクーグ少将と交信している。 「クーグ少将、敵は前方と両翼から我が艦隊を包囲殲滅する気らしい」
「リュウ少将、現在我が艦隊は20万隻。それに対して敵は40万隻。既に3方向から包囲されて後方反転撤退は極めて困難だ」
「そうだな。友軍の合流まではまだ時間が掛かりそうだ。クーグ少将、第9第10艦隊で敵中央艦隊に集中砲火を行う他あるまい」
「うむ、もう、それしかあるまい。リュウ少将」
その頃、螺旋連邦艦隊の両翼に移動完了した帝国両翼艦隊に中央艦隊旗艦より攻撃命令が下る。
「ヒーロック准将、両翼艦隊に艦載機を出撃させ敵空母艦隊からの艦載機出撃を阻止!次に戦艦艦隊を中央その両翼に巡洋艦隊を配備して一斉砲撃を開始!」
「はっ!では、両翼艦隊の砲撃開始と同時に中央艦隊の砲撃を開始致します!」
螺旋連邦艦隊の両翼から帝国両翼艦隊から出撃した艦載機群が迫る。続いてそれを援護する形で戦艦艦隊と巡洋艦隊の一斉砲撃が始まる。帝国両翼艦隊の中性子ビームと中性子パルスに側面から攻撃を受ける螺旋連邦艦隊は慌てふためく。
「クーグ少将!我が第9艦隊の空母艦隊に敵艦載機群が攻撃をしている為、艦載機の発進が不能!」
「クーグ少将!敵艦隊の砲撃により巡洋艦隊と駆逐艦隊の9割が大破!」
「クーグ少将!空母艦隊はほぼ壊滅状態!戦艦艦隊の側面5割が大破!」
「戦闘可能な全艦隊に伝達!ミサイルを側面敵艦隊に向け全弾発射!」
「リュウ少将!我が第10艦隊の空母艦隊は全滅!一機の艦載機も発進出来ません!」
「リュウ少将!巡洋艦隊全滅!駆逐艦隊の7割が大破!」
「リュウ少将!戦艦艦隊の6割が大破!隊列を維持出来ません!」
「ミサイルを放射状に全弾発射!第9艦隊の戦艦艦隊との合流を急げ!」
帝国中央艦隊旗艦では戦況を確認して一斉砲撃が開始された。
「ヒーロック准将、中央艦隊の全砲門開け!」
「はっ!全艦隊!敵艦隊に向け一斉砲撃開始!」
3方向から帝国艦隊の攻撃を受けて隊列が乱れた螺旋連邦艦隊は、その持てる残存艦隊の全てを敵中央艦隊に向ける。
「全砲門を敵中央艦隊に向け開け!通信担当官!リュウ少将との回線を繋げ!」
「はっ!・・・・リュウ少将との回線が開きました!」
「リュウ少将!この場は私が死守する!貴官は即時反転撤退をして友軍と合流しろ!」
「クーグ少将!貴官を見殺しには出来ん!私も戦う!」
「リュウ少将!貴官とは士官学校以来からの同期だ。せめて貴官だけでも助かって欲しい!」
「クーグ少将!それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「リ、リュウ少将!?・・・・おい!通信回線はどうした!?」
「ク、クーグ少将!・・・第10艦隊は全滅!・・・リュウ少将閣下は戦死された模様です!」
「な、何だとう!・・・現在の第9艦隊の被害は?」
「空母、巡洋、駆逐艦隊は全滅!戦艦艦隊は1割に満たりません!」
「クーグ少将!帝国艦隊から降伏勧告が届きましたぁ!我が艦隊は完全に包囲されて居ります!」
「全艦隊機関停止。・・・・帝国艦隊に降伏を受託すると伝えろ。・・・・・・・・・・・・・」
螺旋連邦第9艦隊から降伏受託の通信を受けた帝国艦隊旗艦では。
「ブラードル大将閣下、敵第9艦隊より降伏を受託するとの通信が入りました」
「うむ。敵戦艦を拿捕。捕虜を収容せよ」
こうして第10惑星での戦闘は帝国の首都星防衛艦隊の勝利となった。

ここは第8惑星周回軌道上。螺旋連邦第7艦隊と第8艦隊の下に第9艦隊から緊急連絡通信が届いた。
「ジューン中将、第9艦隊から緊急連絡通信が届きました。第10艦隊は全滅、第9艦隊は降伏との」
「何!リュウ少将とクーグ少将の安否はどうだ?」
「はい、リュウ少将は戦死。クーグ少将は敵の捕虜となられた模様です」
「至急!第8艦隊のボンドル少将に回線を繋げ!」
「はっ!・・・・・・・・・・第8艦隊ボンドル少将との回線が開きました」
「ボンドル少将、貴官の方でも第9艦隊からの緊急連絡通信が届いたか?」
「はい、こちらでも受信しました。ジューン中将閣下」
「ならば話は早いな。ここで待機していても敵に殲滅されるだけだ。ジャルバス元帥閣下に確認するまでもない。第7艦隊と第8艦隊は至急第6惑星まで撤退する」
「それが宜しいでしょう。既に2個艦隊が失われた以上、戦力を集結するのが得策だと」
「うむ。では、全艦隊!撤退せよ!」
第7第8艦隊は第6惑星へと進路を取る。そして第5惑星と第6惑星の中間宙域に待機している第4艦隊、第5艦隊、第6艦隊では。
「第5第6艦隊との回線を繋げ!」
「はっ!・・・・・・・・・・・第5第6艦隊との回線が開きました。エムイ大将閣下」
「ツカサ中将、ヨシー中将。ジャルバス元帥閣下は撤退はせんとの事だ」
「ですがエムイ大将閣下、それでは危険が増すばかりです。先程第7艦隊ジューン中将からは第10艦隊は全滅、第9艦隊は敵に降伏したと緊急連絡通信が・・・・・・」
「そうです。その為第7第8艦隊は第6惑星まで撤退すると・・・・」
「ツカサ中将、ヨシー中将。総司令官の命令には逆らえない。暫く現宙域で待機する」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
両中将が沈黙する。と、その時。第5艦隊旗艦の艦橋でソナー担当官が叫んだ。
「ツカサ中将!側面から敵艦隊が接近して来ます!」
「何!全艦隊!直ちに迎撃体制を取れ!」
側面からの帝国艦隊の急襲を受けた3個艦隊は急いで迎撃体制を取る。だが、時既に遅し。ユユーゼ大将指揮下の側面遊撃艦隊の一斉砲撃が届く。
「イブレッド少将、紡錘陣形を維持しつつ敵3個艦隊の中央を分断せよ!」
「はっ!では、敵艦隊中央突破をしつつ全艦載機を出撃。敵空母艦隊の艦載機の出撃を阻止します!」
迎撃体制を完成する前に空母艦隊からの艦載機の出撃を阻止され、尚且つ、側面遊撃艦隊に中央突破をされた螺旋連邦艦隊は動揺した。また、通信妨害により各々の艦隊の艦橋では。
「エムイ大将!第5第6艦隊との通信が不能です!」
「何だとう!止むを得ん!全艦隊!有視界の範囲で戦闘を継続せよ!」
「ツカサ中将!敵の通信妨害の為、両艦隊との通信不能!」
「しまったぁ!・・・・全艦隊!後退しつつ体制を立て直せ!」
「ヨシー中将!第6艦隊の空母艦隊が壊滅状態です!」
「第4第5艦隊への回線はまだ繋がらないかぁ!」
「駄目です!依然通信不能!」
一方、側面遊撃艦隊旗艦の艦橋では2次攻撃命令が出される。
「イブレッド少将、我が艦隊を半数に分け各々敵艦隊の後方より攻撃させよ!」
「はっ!では、15万隻づつに分け敵艦隊の後方から攻撃を行います!」
二手に分断された螺旋連邦艦隊の後方に迂回した帝国艦隊は、先ず、巡洋艦隊と戦艦艦隊の一斉砲撃を行い。敵艦隊の6割を撃破してから駆逐艦隊を前進させ、レール・キャノン砲の集中砲火を行う。これにより更に2割の艦隊を失った螺旋連邦艦隊は、もはや帝国艦隊の敵ではなかった。
「ツカサ中将!敵の通信妨害波が途切れました!」
「よし!エムイ大将とヨシー中将との回線を繋げ!」
「ツカサ中将!た、大変です!第4艦隊旗艦及び第6艦隊旗艦が撃破されましたぁ!」
「何!!!エムイ大将とヨシー中将の生存は確認したかぁあ!!」
「い、いえ!・・・・両閣下共戦死された模様です!!」
「現在の残存艦隊数はどうなっている!?」
「我が第5艦隊2万隻のみ。あとは全て撃破された模様!!」
「開いている宙域はどの座標だ!」
「はい!座標0122宙域が現在開いて居ります!!」
「よし!傷ついた巡洋艦隊と駆逐艦隊から将兵を大至急戦艦艦隊に収容。巡洋艦隊と駆逐艦隊を無人自動航行に切り替え、戦艦艦隊の両翼に配備。現宙域からの離脱を行う!急げ!!」
戦艦艦隊に人員の収容を行い無人の艦隊を盾にして宙域から撤退を始める第5艦隊である。
「ユユーゼ大将閣下、敵2万隻の艦隊が撤退をして居りますが追撃致しますか?」
「ブラードル艦隊からその後何か通信はあるか?イブレッド少将」
「はっ!既に第7惑星周回軌道上にて敵第7第8艦隊と交戦。第8艦隊は全滅。ボンドル少将は戦死第7艦隊は全面降伏。ジューン中将を捕虜にしたとの連絡が届いて居ります」
「うむ。では、現宙域でブラードル艦隊が合流するのを待つ。全艦隊攻撃停止!!」
帝国艦隊が追撃を断念したお蔭で辛うじて第5艦隊は宙域からの離脱に成功した。

第3惑星周回軌道上で合流した第1第2第3艦隊は第5艦隊からの緊急連絡通信を聞いて驚愕する。
「ツカサ中将、それは本当か?」
「はい、ジャルバス元帥閣下。第7第9艦隊は降伏。第4第6第8第10艦隊は全滅です」
「敵に与えた損害はどれ位だ?」
「推測ですが約10万隻程度かと思われます」
「今更だがエムイ大将の具申を聞き入れるべきであったな・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「サダール大将、ダーイ大将、ツカサ中将。本作戦は失敗だ。これより第5艦隊の合流を待ってから要塞まで撤退する」
「はっ!(サダール、ダーイ、ツカサ)」
だが、第5惑星と第6惑星の中間宙域で合流したブラードル艦隊とユユーゼ艦隊は、超光速推進航行を行い第4惑星と第3惑星の中間宙域まで移動していた。また、要塞方面からはビトー艦隊が第2惑星と第3惑星との中間宙域まで移動してる。そして第5艦隊が合流した事で螺旋連邦艦隊は、要塞へと撤退を始める。
「ブラードル大将閣下、敵艦隊32万隻が要塞方面へ撤退して居ります」
「ヒーロック准将、敵艦隊を追撃撃破せよ」
「はっ!」
「ユユーゼ大将閣下、我が艦隊も敵艦隊を追撃致します」
「イブレッド少将、ブラードル艦隊に遅れを取るな」
「はっ!」
「ビトー大将閣下、時期ブラードル艦隊とユユーゼ艦隊と第3惑星宙域に於いて合流致します」
「タークト准将、正面から来る敵艦隊を足止めする。電磁波動機雷を宙域に散布せよ」
「はっ!」
帝国三大将軍率いる螺旋連邦艦隊殲滅作戦の最終局面が始まる。

要塞方面へ撤退している螺旋連邦艦隊の後方から帝国艦隊60万隻が接近して来た。
「ジャルバス元帥閣下!後方より帝国艦隊60万隻が急速接近して来ます!!!」
「何!敵は思ったより早く移動している様だな。全艦隊!最大速度で逃げ切れ!!」
後方からの追撃を避ける為に速度を最大限まで加速する螺旋連邦艦隊。しかし、その前方に待ち受けていたのは帝国艦隊の散布した電磁波動機雷群であった。
「ジャルバス元帥閣下!前方に敵機雷群があります!!」
「馬鹿な!!空間探知機雷群に阻まれてこの宙域には敵がいない筈では?」
「ジャルバス元帥閣下!敵機雷群の後方に敵艦隊10万隻が待機して居ります!!!」
「敵は空間探知機雷群を突破したと言うのかぁ!!・・・・しかし、どうやって?」
「このまま前進するのは危険です!!元帥閣下!次のご指示を!」
「至急!第2第3第5艦隊との回線を繋げ!!」
「はっ!・・・・・・・・・・・・・・全回線が開きました!!」
「サダール大将!君の艦隊10万隻で敵機雷群を可能な限り破壊せよ!」
「はっ!」
「ダーイ大将!君の艦隊10万隻は我が第1艦隊と共に反時計廻りで旋回!敵艦隊の最左翼に攻撃を集中する!」
「はっ!」
「ツカサ中将!君の艦隊2万隻は第2艦隊サダール大将の指揮下に入り、敵機雷群突破と同時に前方敵艦隊との交戦は可能な限り避けて要塞まで撤退しろ!!」
「我が第5艦隊だけ撤退しろと言われるのですか?我が艦隊も敵艦隊と交戦致します!!」
「ツカサ中将、第2艦隊の援護があれば2万隻程度は逃げ切れるだろう。要塞に無事に辿り着いて帝国艦隊がガルマン回廊を通過するのを阻止せよ!これは命令だ!」
「元帥閣下・・・・・・・・・・了解・・・致しました・・・・・」
「よし!!全艦隊!直ちに作戦を遂行せよ!我が螺旋連邦の勝利の為に全力を尽くせ!!!」

螺旋連邦艦隊の後方から迫るブラードル艦隊とユユーゼ艦隊の各々の旗艦艦橋では。
「ヒーロック准将、ユユーゼ艦隊との回線を開け」
「はっ!・・・・・・・・ユユーゼ艦隊との回線が開きました」
「ユユーゼ大将、敵艦隊20万隻が貴官の左翼から攻撃を仕掛けて来る様だな」
「ブラードル大将、ここは私に任せて要塞方面に向かった艦隊を追撃してくれ」
「うむ、分かった。貴官の勇戦を期待する」
「貴官もな。よし!イブレッド少将。敵艦隊の正面に全艦隊を移動させろ!」
「はっ!直ちに敵艦隊の正面に全艦隊を移動致します!」
要塞方面の追撃と螺旋連邦艦隊20万隻の迎撃の為、二手に分かれたブラードル艦隊とユユーゼ艦隊。先ずはユユーゼ艦隊30万隻と螺旋連邦艦隊20万隻との交戦から始まる。
「ユユーゼ大将閣下、敵艦隊の正面に全艦隊の移動完了致しました」
「ヒーロック准将、全艦隊。敵艦隊との距離2000mまで前進せよ」
「はっ!全艦隊、敵艦隊との距離2000mまで前進致します!」
一方、螺旋連邦第1第3艦隊の各々の旗艦艦橋では。
「ダーイ大将、これより全艦隊を紡錘陣形にて敵艦隊を中央から分断する」
「はっ!では、戦艦艦隊を中央に巡洋艦隊を右翼駆逐艦隊を左翼、空母艦隊を後方に配備致します」
「うむ」
紡錘陣形を取り帝国艦隊の中央突破を開始する螺旋連邦艦隊。同時に帝国艦隊の一斉砲撃が始まる。
「ユユーゼ大将閣下、敵艦隊との距離2000mに達しました」
「全艦隊!砲門開け!一斉砲撃開始!!」
「ジャルバス元帥閣下!敵艦隊の砲撃が開始されました!」
「中央戦艦艦隊!前方主砲一斉砲撃開始!このまま突き進め!!!!」
「ダーイ大将閣下!敵艦隊は我が艦隊の中央に砲火を集中して居ります!」
「巡洋艦隊と駆逐艦隊の全砲門を開き応戦しろ!!!」
両者の激しい砲撃戦が繰り広げられている。次第に螺旋連邦艦隊の勇戦により帝国艦隊は中央から分断される事となった。士気上がる螺旋連邦艦隊の旗艦艦橋では。
「ジャルバス元帥閣下!敵艦隊の中央突破に成功致しました!」
「よし!!後方の敵艦隊から完全に離れた時点で時計回りに旋回!右翼の帝国艦隊の後方に廻る!」
二手に分断された帝国艦隊旗艦艦橋に於いては。
「ヒーロック准将、敵艦隊の両翼に向け全艦載機を出撃させ近接戦闘を展開!敵空母艦隊を撃滅しつつ敵艦隊の反転行動を阻止せよ!!」
「はっ!ユユーゼ大将閣下、分断された我が艦隊は如何致しますか?」
「艦載機群が敵の反転行動を阻止している隙に、敵の後方に再集結して再び一斉砲撃を行う」
「はっ!」
一見、螺旋連邦艦隊の中央突破が成功したかに見えたが、実はあえて帝国艦隊は敵艦隊の正面に布陣して、中央突破されたかに偽装する事で敵の後方を取るのが目的であった。
「ダーイ大将閣下!両側面から敵艦載機群が急襲して来ます!!!」
「何!!我が艦隊の艦載機の発進を急げ!!!」
だが、螺旋連邦空母艦隊の艦載機出撃より、帝国艦隊の艦載機群の攻撃の方が早かった。
「ダーイ大将閣下!各空母艦隊より緊急連絡通信を入電!敵艦載機群の猛襲により艦載機発進不能です!!更に空母艦隊の7割が大破!!!!」
「何だとう!!!仕方が無い!巡洋艦隊と駆逐艦隊の転回中止!!全砲門を開き敵艦載機群に対し砲撃せよ!!!!」
「ジャルバス元帥閣下!敵艦載機群の攻撃により我が艦隊の反転行動が阻止されつつあります!」
「止むを得ん!戦艦艦隊の転回中止!!全砲門を開き応戦しろ!!!!!」
帝国艦隊の艦載機群との交戦に手間取る螺旋連邦艦隊を余所に、帝国艦隊は螺旋連邦艦隊の後方に再集結を完了していた。
「ヒーロック准将、艦載機群を艦隊砲撃有効射程範囲外に離脱、帰艦させよ」
「はっ!艦載機群を艦隊砲撃有効射程範囲外に離脱、帰艦させます!」
「続いて戦艦艦隊から中性子ビームの一斉砲撃及び、巡洋艦隊から中性子パルスの一斉砲撃並びに駆逐艦隊からレール・キャノンの一斉砲撃を開始!!」
「全艦載機群!艦隊砲撃有効射程範囲外に離脱!!!」
「よし!全艦隊!敵艦隊後方からの一斉砲撃開始!!」
螺旋連邦艦隊後方から帝国艦隊の一斉砲撃が始まる。
「ダーイ大将閣下!!後方より敵艦隊の砲撃が来ます!!!!」
「大至急!!回避行動に移れ!!!!」
「ま、間に合いません!!!うっわぁあああああああああああああああああああああ!!!!!」
「ジャルバス元帥閣下!!敵艦隊の砲撃により第3艦隊旗艦が撃破!!!ダーイ大将閣下戦死!」
「何!!!!!残存艦隊は直ちに前進!砲撃有効射程範囲外まで離脱しろ!!!!!」
「だ、駄目です!!ちょ、直撃来ます!!!ううっわぁあああああああああああああ!!!!!」
帝国艦隊の砲撃の直撃を受けた第1艦隊旗艦は撃破され、ジャルバス元帥は壮絶な戦死を遂げる。

時同じ頃、電磁波動機雷群の直前に移動した第2第5艦隊12万隻に於いては。
「第2艦隊の全艦隊へ!機雷群に向け砲撃開始せよ!!」
電磁波動機雷群に向け第2艦隊の一斉砲撃が始まった。
「サダール大将閣下!第1第3艦隊が全滅した模様です!!」
「何、何だとう!!!それでジャルバス元帥とダーイ大将はどうした!!!!!?」
「お二人とも戦死された模様です!!!!!」
「くそぅ!!!!で、後方の敵艦隊の動きはどうなっている!!!?」
「い、いえ。まだ、何も・・・・・・・・・・」
「そうか・・・兎に角機雷を破壊するのが先決だな。よし!もっと砲火を集中させろ!!」
「て、敵です!!敵艦隊が後方から接近して来ます!!!」
「もう少しだと言うに・・・・・空母艦隊より艦載機を出撃させろ!!」
「はっ!」
空母艦隊から艦載機が全機出撃した。また、帝国艦隊からも応戦すべく艦載機が出撃する。
「サダール大将閣下!機雷群の一部に突破口が開きました!!!」
「よし!艦載機群に撤退命令を出せ!急げ!!!」
撤退命令を受けて艦載機が続々と帰艦した。そして機雷群の突破を始める。
「全艦載機帰艦完了!・・・・・・・・・あっ!敵の砲撃が接近中です!!!」
「全艦隊!機雷群強行突破開始!!前方敵艦隊との交戦をしつつ第5艦隊2万隻の援護をする!」
次々と機雷群を強行突破し始める螺旋連邦艦隊。それを待ち受けるビトー艦隊が攻撃して来る。
「タークト准将!全艦隊強行突撃開始!!敵艦隊を後方へと押し戻せ!!!」
「はっ!全艦隊強行突撃を開始致します!!!」
ビトー艦隊と螺旋連邦艦隊との熾烈な戦いが始まった。そして後方からブラードル艦隊が接近した頃、ビトー艦隊7万隻、螺旋連邦艦隊5万隻まで消耗していた。
「サダール大将閣下!前後の敵は合わせて37万隻です!!」
「2時の方向に退路が出来たぞ!!!全艦隊現宙域での戦線を急速離脱!要塞へと戻る!!!!」
退路を確保した螺旋連邦艦隊5万隻は、帝国艦隊の追撃を振り切り要塞方面に撤退した。
「サダール大将閣下、ご無事で何よりでした。もう、ここまで来れば大丈夫でしょう」
「ツカサ中将、今回の戦いで我々の失った犠牲は大き過ぎるな・・・・・・・・・・」
「そうですね、閣下。しかし、何故?帝国艦隊はあーまで機敏に行動出来たのでしょうか?」
「そうだな。もしかすると内部から情報が漏洩していたのかも知れん・・・・・・」
「なるほど。その可能性は強ち否定は出来ませんね・・・・・・」
「兎に角、要塞に戻ってから調査してみよう・・・・・・」
「はっ!」
一方、帝国3個艦隊は集結後、首都星ゲーリングに進路を向けて帰還した。5万隻の艦隊を取り逃がしたとは言え100万隻の螺旋連邦艦隊の9割り以上を撃破殲滅。結果、艦隊戦に於ける戦いは帝国艦隊の圧倒的勝利となった。敵味方合わせて1億2千万人以上の犠牲によって・・・・

宇宙螺旋戦争(スペース・スパイラル・ウォーズ)3rd.に続く


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