男爵ひろし様の作品

寵愛と嫉妬の果てに・・・

 昭和の始めの頃。まだ、日本の財閥が権勢を振るっていた時代。 ここ琴獏(きんばく)伯爵の館では、琴獏伯爵がコレクションの手入れをしていた。
「う〜ん!いつ見てもこの黄金の皿は美しいものだ・・・・」
「トントン・・・カチャ・・・伯爵、失礼致します」
「うん?・・・何かね春香君・・・」
「はい、唯今、陸軍の爆 太朗大将閣下がお見えです」
「爆大将が・・・うむ、客間に通したまえ。春香君」
「はい、畏まりました。伯爵」
当時、第一次世界大戦で戦勝国になった大日本帝国は敗戦国 からの多額の賠償金と、アジア大陸進出に向けて軍需景気が盛んであった。また、各財閥の多額の資金援助によって軍部 の権勢もまた増していたのである。
「爆大将、お待たせした。で、ご用件は?」
「琴獏伯爵、二ヶ月後、我が陸軍と海軍はいよいよ大陸進出を 開始する事になりました。本日はそのご報告に」
「それは態々、等々我が大日本帝国も大陸に進出ですな」
「ええ、大陸には変わった皿があると聞いて居ります」
「ほう〜、では、それを手土産にして貰いたいですなぁ」
「ははは、勿論ですよ、伯爵。軍部も大分お世話になって居ります からなぁ〜」
「あははは、期待してますぞ。爆大将」
「おっと、忘れる所でした。以前から伯爵にご依頼されて居りました 新しいメイドの当てが御座います」
「おお、ようやくですな。春香だけでは多忙ですので・・・・」
「3日後、当館に伺いさせますな。伯爵」
「うむ、宜しく頼みますぞ。大将」
「では、私はこれにて失礼致します」
「ご苦労でした。春香君、爆大将をお見送りして差し上げなさい」
「はい、伯爵。・・・閣下、どうぞ」

琴獏館では伯爵とメイドの春香だけである。その為に伯爵の全ての 身の回りの世話は春香が行っていた。そう、身の回りの全てを・・・
「春香君、食事の後片付けが終わり次第、私の部屋に来たまえ」
「はい、伯爵・・・・・」
春香は琴獏館に奉公して3年になる。27歳の若さで結婚もせずに 伯爵に仕えていた。伯爵も1年前に妻を病気で無くしてからは、彼女に心を奪われていたのである。
「トントン・・・伯爵、お伺い致しました」
「入りたまえ・・・・」
「はい・・・・・・・」
「ワインでも嗜むかね、春香君」
「はい、頂きますわ・・・・・」
「では、今宵に乾杯・・・」
ソファーに腰掛けてワインを嗜む二人。
「美味しいですわぁ〜・・・伯爵、お皿を拝見しても宜しいですか?」
「構わんよ、春香君」
ほのかに頬を赤らめた春香は硝子ケースの中の黄金の皿を見ている。
「何度見ても綺麗ですわね、このお皿は・・・」
「敗戦国の螺旋帝国から賠償金の一部として徴収した皿だ」
「伯爵・・・・・・」
「さぁ、おいで春香・・・・」
「はい・・・・・・」
上目遣いで伯爵を見る春香の肩を抱き、そっと彼女の服を脱がせる伯爵。
「あん・・・だ、だめ・・・そ、そこ・・・は・・・あ〜」
「そことは?・・・うん?・・・さぁ〜答えてご覧」
「いや!・・・そ、そんな・・・こと・・・言えない・・・」
「言わないとこうだぞ・・・・むふふ」
「あっ!・・・や、や・め・て・・・許して・・・下さい・・・」
「なら言うんだ、さぁ〜そことは何かね。春香」
「そ、それは・・・いや!やっぱり恥ずかしい〜!・・・・」
「言うまでそことやらをいつまでも責め続けるぞ。いいのかね?」
「あぁああああ〜・・・許、許して・・・お、お願い・・・・」
「むふふふふ・・・・・・・・・」
「伯、伯爵の・・・意、意地悪・・・・・あっ・・・・・」

そして3日後、館の玄関前に一人の女性が立っていた。
「あの〜今日からここで働く事になりました束沙と申します」
「あら、あなたね。私、春香といいます。宜しく」
「は、はい。こちらこそ」
「では、伯爵にお会いしましょうね。束沙さん」
「はい」
春香の案内で伯爵に対面する束沙である。まだ、20歳の彼女は 高貴な人間と会う事に緊張していた。
「伯爵、今日から働いて下さる束沙さんです」
「束沙です。よ、宜しくお願い致します。伯爵様」
「おや、随分と若い娘さんが来たな。宜しく頼むよ束沙君」
「は、はい・・・・・」
「春香君、仕事内容を束沙君に説明して上げなさい」
「はい、伯爵。・・・束沙さん、あちらで説明するわね」
「は、はい・・・お願いします」
春香に仕事の手解きを受けて束沙は徐々に慣れていった。夜の奉仕 以外は別にして・・・・
「あ、束沙さん。お片付けが終わったら先に休んでいいわよ」
「はい、春香さんはこれからどうするんですか?」
「私?・・・伯爵に一日のご報告をするのよ・・・」
「そうなんですか、大変ですね」
「ふふふ、慣れっこよ〜・・・それじゃ」
「はい」
まさか春香が夜な夜な伯爵との愛欲行為をしているとは知らずに、 束沙は後片付けを終えて就寝した。
「お休みなさい・・・・・」

数日後、伯爵は束沙を部屋に呼んだ。
「何でしょうか?伯爵様」
「おお、来たか。どうだ、仕事には慣れたか?」
「はい、お蔭さまで」
「そうか、・・・束沙君、この皿は綺麗だろう」
「わぁ〜!本当に綺麗なお皿ですね」
「これは何故10枚あるか君には分かるかね?」
「いえ?」
「これは螺旋帝国が昔10個の小国だった頃、1枚1枚がその国の 象徴だったのだよ。その後、統一されて宮廷に保管された次第さ」
「そうなんですか・・・・」
「今までこの皿の手入れは私と春香君にして貰っていたんだが、春香君 も忙しいからこれからは君に手入れを頼む事にしたい」
「え?・・・宜しいのですか?私なんかで・・・・」
「ああ、何か不服でもあるのかね?」 「い、いえ!・・・」
「宜しい。・・・それから今夜、夕食が終わったらまたここに来なさい」
「は、はい・・・・」
「うむ、では、仕事に戻りたまえ」
「はい、失礼致します」
時は過ぎ夕食が終わった伯爵は春香に告げる。
「春香君、黄金の皿の世話係りはこれから束沙君に頼む事にした」
「え?・・・で、では、私は・・・・・」
「いいね。春香君・・・・」
「は、はい・・・・・・・」
伯爵の突然の言葉に驚く春香である。

その夜の事、束沙は伯爵の部屋を訪れた。
「伯爵様、お伺いしまた」
「まぁ、そこに掛けたまえ」
「はい・・・・」
「束沙君、ワインは嗜める方かね?」
「いえ、お酒は飲めない方です」
「そうか、それは残念。では、私だけで嗜むとしよう」
「申し訳ありません・・・・」
「あはは、別に謝る事はないだろう」
「そうですね、あは」
可愛い笑顔で反応する束沙を見て伯爵は感動する。
「束沙君、なんて無邪気な笑顔をするんだね」
「いやですわ、伯爵様ったら〜・・・・」
「束沙君・・・・・・・・」
「え!?・・・・・何、何をするんですか?・・・」
「何って君が欲しくなったからだよ・・・さぁ〜!」
「い、いけませんわ!・・・高貴なお方が・・・こ、こんな・・・」
「むふふ、男女の間にそんな理屈は通用しないさ」
「え?・・・・・」
「これもメイドの役目だよ、束沙君。・・・・さぁ〜おいで!」
「や、やめて・・・下さい!・・・伯爵様・・・・」
「おや?春香君にはこの事は聞いていない様だね」
「え?・・・じゃ、じゃぁあ・・・一日のご報告って・・・・」
「そうさ、この館の習しだよ。束沙君・・・むふふ・・・」
「い、いや!・・・やめ・・・て・・・お、お願い・・・します」
「そうは行かないなぁ〜・・・・さぁ〜」
「あっ!・・・・・あ、あぁあああ〜・・・・・・・・・」
彼女の服を器用に脱がす伯爵の手は、次第に彼女の敏感な所へと 流れる様に移動した。この夜、束沙は初めて男の肌の感触を知る。

次第に夜の奉仕に悦楽を覚えた束沙は、もうすっかり伯爵の寵愛を 独占していた。伯爵からの寵愛を失った春香は嫉妬心を燃やす。
「あの小娘〜!・・・伯爵は私の物よ!・・・悔しい〜!」
何か束沙に思い知らせる術は無いものかと春香は画策した。
「そうだわ!・・・これを・・・うふふ・・・」
春香は伯爵が留守にしている隙に硝子ケースの黄金の皿を1枚抜き取った のである。
「うっふふふ、これであの小娘もおしまいね」
暫くして伯爵が館に戻って来た。そして今夜も束沙に奉仕をさせている。
「おぉぉおお!・・・束沙、大分上手になったな」
「うふふ・・・誰かさんのお蔭ですわ」
「あはは、それは誰の事かね?」
「まぁ〜憎い人!・・・・パクッ!」
「おっ!・・・・・おぉぉぉおおおお〜!」
束沙の濡れた口の愛撫に悶える伯爵。次第に行為は激しさを増して時は 過ぎて行った。
「今夜は最高だったよ、束沙」
「そうでしょう〜・・・うふ」
「さて、美人の後ではその輝きも失せるだろうが、皿でも見るとしよう」
伯爵はベッドから立ち上がり黄金の皿の前に行く。
「おや?・・・1枚、2枚、3枚・・・・・」
「どうしたの伯爵?」
「可笑しい?・・・何度数えても皿が1枚足りないぞ」
「え!・・・そ、そんな筈は。昼間、確かに10枚あったわよ」
「やはり1枚足りない!・・・束沙!これはどう言う事だ!?」
「私、私は知りません!でも、確かに10枚ありましたよ!」
「では、これをどう説明するんだ!さぁ!答えるんだ!」
「きゃっ!・・・い、痛い!」
束沙の肩を鷲掴みにして伯爵は激しく問いただす。
「お前にこの皿の手入れを任せたんだぞ!そのお前が知らないとは言わせん!」
「で、でも、本当に知らないんです!信じて下さい!」
「えぇぇえい!黙れ!・・・そうだ!春香を呼ぼう」
部屋のドア越しから春香を呼ぶ伯爵。
「春香!春香!・・・・」
「はい!何でしょうか?」
「春香、この縄で束沙を縛り上げろ!さぁ!早く!」
「は、はい!・・・・・」
「あっ!・・・春香さん!な、何を・・・・」
「煩いわね!伯爵のご命令よ!神妙にしなさい!」
下着姿の束沙は春香に強引に縛り上げられてしまった。
「よし!春香、束沙を地下室に連れて行け!」
「はい。・・・さぁ〜束沙!さっさと前をお行き!」
「伯、伯爵様〜!こ、これは何かの間違えです〜!」
「煩い!とっとと歩け!」

地下室に連れて来られた束沙は、片脚を縄で吊られてしまう。
「伯爵様〜!これは誤解です!私は何も知りません!」
「まだ、強情を張る気だな!春香!束沙を痛めつけろ!」
「はい!・・・さぁ〜!素直に白状なさい!・・・ビッシッ!バッシッ!」
「ひぃいいいい!・・・や、やめて〜!・・・ひっ!ひぃひいいいい!」
幾度となく春香に鞭打ちをされる束沙。だが、身に覚えのない事を言える 筈もなく時だけが過ぎて行った。
「しぶとい女だなぁ!・・・」
「伯爵、如何致しましょうか?」
「うむ、春香、私は明日から3日間、爆大将と呉の軍港に行かねばならん」
「はい、そのご予定でしたわね」
「ガルシア国の大使を招いての晩餐会がある。夫人同伴なのだが始めはこの 女を連れて行く予定だったが、春香、お前に私と一緒に来て貰うぞ」
「はい!喜んで」
「そしてこの女は罰として3日間、ここに監禁して置く事にする」
「はい、それが良いでしょう。・・・うふふ」
「え!・・・そ、そんなぁ〜!」
「春香、部屋に戻るぞ。明日の準備をしなくてはならんからな」
「はい、私もお手伝い致しますわ。伯爵」
束沙を片脚吊りのままの姿にして、伯爵と春香は部屋へと戻って行く。 その後姿を必死に呼び止め様と束沙は叫んだ。
「ま、待ってぇええ!私じゃない!私じゃないわぁああ!・・・い、いや! お、置いて行かないでぇえええ!お、お願いです!た、助けてぇえええ!」
懸命に哀願する束沙の叫びを背中で聞いている春香の胸中は・・・・
『うっふふふふ・・・・いい気味だわ・・・・ふふふ』
「待ってぇえええええええええええええええええええ!」
翌朝、伯爵と春香は館を出て呉に向かった。その頃、地下室に監禁されて いる束沙は激しい疲労感に襲われていた。
「うっううう・・・く、苦しい〜・・・だ、誰か・・・助けて・・・」
地下室の天窓から太陽の日差しが差し込んでいる。この地下室は館の花壇 の下に設けられていたのである。週の2〜3度、その花壇の手入れの為に庭師が訪れていた。その影が天窓に映るのが見えた束沙は、持てる力を 振り絞って叫んだ。
「あっ!そ、そこ方!お、お願いです!私を・・・ここから出して・・・ 下さい!・・・どうか!どうかぁあああああ!」
右足を軸にして幾度か飛び跳ねて救いを求める束沙。だが、この天窓は可也の厚みと曇り硝子で出来ている。その為、外側から中を窺い知る事は殆ど出来ない。当然の事ながら声なども外に届く筈はないのであった。自分の足元の下でまさか一人の人間が、無様な格好で監禁されているとは誰も思うまい。そして庭師の影は次第に天窓から消えて行った。
「あっ!い、いやぁああ!・・・い、行かないでぇええ!ちょっ!ちょっと!私、私はここに捕らわれているのよぅ〜!お、お願い!待ってぇええええ!」
しかし、その悲痛な叫びは庭師には届かなかった。その翌日の同時刻に再び天窓に庭師の影が映る。
「そ、そこの方!た、助けて下さい!私をここから出して!・・・・」
だが、やはりその悲しき願いは庭師には届かなかった。
「あっ!い、行かないでぇえええ!後生ですからぁああああ!あぁああ!他に何方か!何方かいらっしゃいませんかぁああああ!どうか!どうか!何方か!こ、この惨めな戒めから!戒めから!お救い下さい!・・・・・」
また、今夜も立ったままで下着を汚す束沙。暗い地下室で過酷な孤独に苛み、誰にも届かぬ悲痛な叫びをあげていた。
「誰か・・・助けて・・・誰かぁあああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「END」


←BACK  TOP  NEXT→